僕が若手の頃は「40歳限界説」なるものがまことしやかに囁かれていて、
「40歳を超えたら感覚が古くなるので業界ではやっていけない」
という通説がありました。
しかし、現在最前線でバリバリやっているのは
僕と同年代(40代中盤)のディレクター達で、
それどころか大先輩達もまだまだ現役で頑張っています。
これは、時代が変わって番組の作りに安心安全を求める風潮があるため、
ちゃんと作ってくれるベテランの需要がなくならないというのもあると思いますが、
単純にベテランDを追いやるような若手Dの数が少ないというのも大きな理由のようです。
現に昨今のADさん達に今後どうなりたいか?と聞いてみると
「ディレクターになりたい!」という人はごく少数派になってしまったように感じます。
もちろんプロデューサーも番組作りに不可欠で、
いいプロデューサーがいいチームを作り、その結果いい番組を作る
ということもあるので優秀な人材がプロデューサーを目指す
というのもとてもいい傾向ではあるのですが、
なにぶん分母が多くないといいディレクターが育つ土壌もなくなってしまうので、
なんとかディレクターを目指すADさんも増えて欲しいなと願う今日この頃です。
ということでこれからこの映像業界を目指す方々が
少しでもディレクターになりたいって思ってもらえたらいいなとあくまで僕が個人的に思う
ディレクターになったら楽しい・オイシイというポイント
をいくつか挙げてみたいと思います。
普通じゃない日常が待っている
テレビの仕事は視聴者の皆さんにいろんな非日常を提供する仕事だったりします。
そんなロケをする時、現場で最前線にいるのはもちろんディレクターです。
聞いたことない国に行ってみたり、とんでもないビッグネームに会ってみたりと
普通の仕事では出会わないような刺激的な体験をすることができます。
また、いろんな分野のプロフェッショナルになれます。
ディレクターは担当するネタに関しては出来うる限りの情報を仕入れて、
何が面白いのか?視聴者はどんなネタに興味があるのか?
を取捨選択するので、担当する対象を猛勉強しなくてはいけません。
宝石ネタの担当になれば、宝石についてとんでもなく詳しくなるし、
ディズニーネタの担当になれば、ディズニーについてとんでもなく詳しくなります。
否応なしに誰よりもその分野に詳しくならなくてはいけなかったり、
体験してみなくてはいけなかったりするので、
自分の趣味嗜好と関係なく見聞が広げられます。
優秀なディレクターは人間的にも魅力的な人が多いですが、
いろいろな人と接して、インプットとアウトプットを繰り返していくと
自然と人間が磨かれていくということだと思います。
出演者と一番近くで向き合える
キャスティングなどはプロデューサーの仕事だったりしますが、
キャスティングした後にスタジオやロケ現場で出演者の方々と相対して向き合うのは
やはりディレクターです。
これは良くも悪くも
番組の出演者が面白くなるかそれほどでもなくなっちゃうかはD次第
というところも多いと思います。
これはプレッシャーですね。
でも逆に言えば出演者さんを演出ひとつでさらに面白くできる可能性もある
とてもやり甲斐のあるポジション。
出演者から絶大な信頼を得るなんてこともできるのです。
自分の考えた演出や構成がハマった時の快感は
ディレクターでないと味わえないものだと思います。
編集マジックの使い手になれる
スタジオやロケの演出で面白いものをさらに面白くする方法もありますが、
「編集」というマジックを使うとさらに面白くすることができる場合もあります。
ナレーションで情報を足してみたり、インサートを入れて分かりやすくしてみたり。
余計な話を削ぎ落として、話をシンプルにしてみたら
スタジオではややウケだった話が爆笑必至の面白話に生まれ変わることもあれば、
トークの間を詰めたり延ばしたりすることで収録物の空気感に変えてしまうなんてことも出来ちゃいます。
スタジオで撮った時は「まぁ面白いね」だったものが
編集を経ることで「すっごく面白いね!」となるのもディレクターの腕の見せ所。
それでさらに視聴率なんかとった日にゃ気持ちイイことこの上なしです。
もちろんディレクターの魅力はこの限りではありませんし
人によって魅力を感じるポイントも様々だと思いますが
なんだかんだ言っても「テレビ作ってるな」という
実感が一番得られるのはディレクターという職業だと僕は思います。
僕自身がプロデューサーという立場なので、側から見ていて
「楽しそうだなー」「カッコいいなー」と思っているポイントをつらつらと書き綴ってみました。
もちろん楽しいことだけではなく辛いこともたくさんあると思いますが
少しでも今ADをやっている人、これから映像業界を志す人が
「ディレクターになりたい!」って思ってもらえたら嬉しいです。